銀河学校について

今の私の原点の一つであるイベント。先日の天リフ忘年会でこの話題を挙げさせてもらいました。その際にSamさんから数学面での難易度の発言もありましたので、具体的に感じたことなどをまとめたいと思います。ただ、あまり詳しく書きすぎると参加者の楽しみを削いでしまいそうなので、参加者には予習として、それ以外の人には概要として楽しめるレベルを目指します。さらに知りたい情報があればコメントをください。暇があれば書ける範囲で書き足します。

※この記事によって行動を起こして何か損害が生じても自己責任でお願いします。正確な情報は自分で調べるように。その代わり得た情報による利益はあなたのものです。自己責任ですから。また私は運営団体とは(今のところ)全く関係ないただの過去の参加者なので、運営団体には迷惑をかけないようにしていただきたいです。

 

銀河学校とは

まず銀河学校とは何ぞや、という方も多いかと思うのでそこから説明しましょう。

銀河学校とは、日本全国からやる気のある高校生たちが集まり、天文台で観測実習、データ解析、成果発表を通じて実際の天文学研究を学ぶイベントのことです。開催団体はNPO法人 Science Station で、東京大学木曽観測所が協力する形になっているようです。毎年12月くらいに参加者の募集があります。

開催場所については、2019年までは木曽観測所で開催されていましたが、2020年、2021年はコロナウイルス感染症拡大の影響でオンライン開催となっています。2022年は2021年12月23日の時点では木曽観測所で開催される予定のようです。もし参加される方がいらっしゃったら、必ず最新の情報を確認するようにしてください。

余談ですが高校生が研究経験を得られるイベントは他にもあります。私の知る限り、もし天、美ら星研究体験隊があげられます。美ら星研究体験隊は恋アスで知った方も多いのでは?イベントの中身を感じ取りたい方は恋アスを視聴することをお勧めします。かなり再現度は高いです。夜食のカップ麺は木曽にはあります。本当に。

moshiten.studio.site

www.miz.nao.ac.jp

通常の開催場所・木曽観測所について

沿革や望遠鏡の情報は木曽観測所のホームページを見ていただけると分かります。ちなみにページに入ってまず目に入るバラ星雲は、よっちゃんさんが処理されたものです。

ここでは私が木曽に行くまで気になっていた情報である、アクセスと木曽のカメラTomo-e Gozenについて触れたいと思います。

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東京大学木曽観測所
当時は整備がなされた直後で、林も一部伐採されていた

アクセス

「木曽?どうやって行くの?」という方、割と多いのではないでしょうか。

木曽観測所は中央線(中央西線木曽福島駅からのアクセスが良く、私が参加した時は木曽福島駅からバスを出してくれました。木曽福島は旧中山道の宿場町で、観光地としても有名です。中央西線には長野・名古屋間を結ぶJR東海の特急「ワイドビューしなの号」が走っています。この列車は木曽福島に停車するので、基本的にはこの列車を利用することになります。私は長野から利用しましたが、乗っていて楽しかったので、観光としてもおすすめです。ちなみに来年にはワイドビューの名は消えてしまうようです。

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新幹線から見える浅間山

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長野駅新幹線ホーム

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木曽福島駅の向かい側

Tomo-e Gozen カメラ

木曽のメイン望遠鏡105cmシュミットについているカメラで、このセットで撮影したデータを処理して銀河学校の研究に使います。実はこのカメラ、ユニークな性能で木曽シュミットを蘇らせた画期的なカメラなのです。私が参加した2018年春当時は Q_0 という、84枚のCMOSのうちの21枚が取り付けられた試験状態で観測しました。シャッタースピード0.5秒で撮影し、加算処理された画像を使った記憶があります。ぶっちぎり性能の電視観望というイメージでよいと思います。詳しい解説は天文リフレクションズの以下の記事がわかりやすいので、ぜひ一読を。

reflexions.jp

キヤノンを説得するのはとても大変だったという噂ですよ。授業では10年がかりだったと聞きました。そのかいあって、素晴らしい成果をすでに出してくれています。研究者の方もすごいです。例えばこちら。

www.astroarts.co.jp

ちなみにこの記事に出てくる大澤さんは、銀河学校2018で班の指導をしていただいた方です。そう、銀河学校の指導員はすごい人なんです。

銀河学校で扱う内容

内容は年によって変わります。その年の内容は募集要項に書いてありますのでご確認ください。多いときは3つの与えられたテーマがあり、その中で自分の希望するものを選ぶとグループに振り分けられます。グループは10人ほどで、希望通りにならない可能性もありますが、とにかく楽しみましょう。

知っておくとよい前提知識

前提知識ってやはり必要なのでは、と不安に思うでしょう。そこにもしっかり触れていきます。

天文関連の前提知識

天文関連の知識は持っていると役に立ちますが、別に必要はありません。その点は公式ページにも書いてあります。

天文に関する基礎知識は必要ありません。天文が大好きな方はもちろん、天文が初めてという方も大歓迎しています。

出典:NPO法人Science Station 銀河学校2022募集要項

実際、地質に興味はあったが天文は初めてだという参加者もいました。わからないことがあればどんどん質問すればよいのです。こんな質問していいのか、などと思って質問を渋ってはいけません。TAさんやグループの人はちゃんと答えてくれますし、他の人も知らない情報を答えてくれることもあります。大学でも同じなので、高校生のうちに質問スキルを身につけておきましょう。天文関連の前提知識については本当に心配する必要はありません。

むしろこのイベントの主眼は研究体験にあり、自分の知識に頼りきるのではなく、自分たちで得たデータと先行研究から何が言えるかを考えることにあります。そしてそれこそが楽しむべきポイントだと思います。グループの人たちと議論することこそが楽しいのです。気づいたら夜、なんてことも。

数学の前提知識

天文関連の前提知識は必要ないですが、数学関連は残念ながら多少必要です。ここはSamさんからも指摘されましたね。周囲のレベルもかなり高いです。有名な高校に通う人もいますし、なんと東大に合格した参加者もいました。参加した当時私は中3(新高1)だったので、数学的なハードルについては認識しやすい立場でした。それを生かしてお話ししましょう。

とりあえず必要なのは指数・対数の知識です。これさえわかれば何とかなると思います。

天文学研究では、データにある数値が桁違いの範囲に分布しがちです。星の質量、距離、明るさ等、一桁(10倍)に収まるものは珍しいのではないでしょうか。メチャメチャデカい数がさらに何十何百倍も変化します。逆に分光のようにとんでもなく細かい数値を扱う分野もあります。そういう時に便利なのが指数・対数です。そんなに難しくはないので、知らなければぜひ予習しましょう。

また、グラフの軸を対数にした対数グラフもよく使います。対数グラフの見方も知っておくべきです。指数が直線に変換されるだとか、べき関数が直線に変換されるだとかを知っておきましょう。コロナの感染拡大を示すグラフにもちゃんと理由があって対数グラフ(片対数グラフ)がよく使われています(軸が歪んでいるからあんなのは嘘っぱちだと騒ぐ人もいるみたいですが、ちゃんと勉強しましょう)。

他に必要な数学的な素養はあまり見当たりません。微分方程式でモデル化して解く、なんてことをやっていた人もいましたが、さすがにそこまでわかる必要は全くないです。理解できれば楽しいですが。

前提知識としては以上です。あとはパソコンの操作に慣れておくくらいでしょうか。

 

とりあえずこれくらいしか書くことが思いつかなかったのでいったん終了としますが、他にも知りたいことがあればコメントください。

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木曽観測所から見える御嶽山